Craft Onsen Project
VOL3
石にかじりついてでも…
才能とは、情熱を持続させる能力のこと
宮崎駿
突然サラリーマンを辞めて、自宅のガレージを改装して湯治施設を始めた僕はかなりヤバい人間に見えたと思う。
当時の自分は玉川温泉のあの感動を再現したくて世界中のみんなと早く共有したくて、寝食を忘れてクラフト温泉の開発に没頭していた。
良い温泉は良い土壌に宿る。僕は全国の温泉地を巡ってそこの山や岩肌に向かい、そこにある石や土を口にした。日本中の土を見ては食べ、触れては舐めているとそこに含まれる成分がわかるようになってきた。ミネラルが乏しいとパサっとしているけど豊富に含まれている石はヘビーだけど苦味の中に独特のコクがある。粘土質で酸味があると胸が高ぶる。そう、良い温泉は良い土壌に宿っている。
地球の生物は大地に眠るミネラルを媒介して誕生した。生命活動は細胞分裂の連続で、それはミネラルを媒介して行われる。そのミネラルが地球上で最も豊富に含まれているのが食べ物でもサプリでもなく実は温泉だったのだ。その大半が日本に存在するという事実に僕は震えた。
日本の温泉資源は世界を変える力がある。石油やガスの歴史を詳細に分析してきた自分には、温泉が同じ道を辿るイメージが鮮明に描ける。むしろ温泉の資源価値は用途もエビデンスも豊富で石油よりずっと高いとさえ思っている。クラフト温泉は資源化に必要な”移動”と”保管”という価値を温泉に与えた。
あとは資源としての価値が顕在化すれば大きな市場が生まれる。
終章 -クラフト温泉のその先-